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【こころのヒント】怒りとの付き合い方――怒る自分を責めず、行動を選んでいくために

こんにちは。Arataカウンセリングルームの矢島です。

前回の「こころのヒント」では、不安との付き合い方についてお話ししました。不安は、未来の危険に備えようとする感情です。

一方で、今回扱う「怒り」は、自分にとって大切なものが傷つけられたときや、境界線を越えられたときに生じやすい感情です。

今回は、怒りをただ抑え込んだり、ぶつけたりするのではなく、少し距離をとって理解し、扱いやすくするための視点について考えてみます。

怒りは、悪い感情なのでしょうか

怒りという感情には、少し怖いイメージがあるかもしれません。

  • 怒ってはいけない
  • 感情的になってはいけない
  • 怒る自分はよくない
  • 人に迷惑をかけてしまう

そう考えて、怒りを感じること自体を責めてしまう人もいます。

たしかに、怒りが強くなりすぎると、強い言葉をぶつけたり、相手を攻撃したり、人との関係を壊してしまうことがあります。

けれども、怒りそのものが悪いわけではありません。

怒りは、不満があることや、自分の大切なものが傷つけられていることを知らせてくれる感情です。

「それは嫌だ」
「そこまで入ってこないでほしい」
「これは大切にしたい」
「このままではよくない」

そんなふうに、自分の境界線や価値観に気づかせてくれることがあります。

怒りは、何かを壊すためだけの感情ではありません。
自分にとって大切なものを守ろうとするサインでもあるのです。

「怒りの感情」と「攻撃的な行動」は分けて考える

怒りと付き合ううえで大切なのは、「怒りの感情」と「攻撃的な行動」を分けて考えることです。

怒りを感じること自体は、自然なこころの反応です。

一方で、怒りに任せて相手を傷つける言葉をぶつけたり、物に当たったり、相手を支配しようとしたりする行動は、人間関係や自分自身を苦しくさせてしまうことがあります。

つまり、大切なのは、

怒らないようにすること

ではなく、

怒りを感じたときに、どのように行動するかを選べるようにすること

です。

怒りをなくすことだけを目指さなくても大丈夫です。
まずは、怒りがあることに気づき、その怒りに巻き込まれすぎずに扱いやすくしていくことが大切です。

怒りの奥には、別の感情が隠れていることもあります

怒りは、とても強いエネルギーを持った感情です。

そのため、怒りが前面に出ているときには、その奥にある別の気持ちが見えにくくなることがあります。

たとえば、怒りの奥には、次のような気持ちが隠れていることがあります。

  • 分かってもらえなかった悲しさ
  • 大切にされなかった寂しさ
  • 傷つけられた痛み
  • これ以上耐えられない疲れ
  • また同じことが起きるかもしれない不安
  • 本当は助けてほしかった気持ち

怒りは、こうした傷つきや悲しみから自分を守るために、一時的な避難場所のように働くこともあります。

「怒っている自分はダメだ」とすぐに否定するのではなく、

「この怒りの奥には、どんな気持ちがあるのだろう?」
「自分は本当は、何を大切にしたかったのだろう?」

と見てみることが役に立つ場合があります。

怒りは、身体にもあらわれます

怒りを感じているとき、こころだけでなく身体も反応しています。

  • 心拍数が上がる
  • 呼吸が浅くなる
  • 手に力が入る
  • 肩やあごに力が入る
  • 頭に血がのぼるように感じる
  • すぐに言い返したくなる

こうした反応は、身体が「すぐに動ける状態」になろうとしているサインでもあります。

怒りが強いときに、冷静に考えるのが難しくなるのは自然なことです。

だからこそ、怒りを感じたときには、まず身体の興奮に気づくことが大切です。

「今、身体に力が入っているな」
「呼吸が浅くなっているな」
「すぐに言い返したくなっているな」

そう気づくだけでも、怒りの勢いのままに動く前に、少し間、つまり時間的な猶予をつくることができます。

怒りが強いときは、5つの領域で観察してみる

怒りが強いときは、出来事・考え・感情・身体反応・行動が一気にまとまって押し寄せてくるように感じることがあります。

そのようなときは、5つの領域に分けて観察してみると、少し整理しやすくなります。

  • 状況:何が起きたのか
  • 認知:そのとき、どんな考えが浮かんだのか
  • 感情:怒り以外に、どんな気持ちがあったのか
  • 身体反応:身体にはどんな変化が起きていたのか
  • 行動:実際に何をしたのか、何をしたくなったのか

たとえば、誰かに強い口調で言われたとき。

状況:強い口調で注意された
認知:「責められている」「軽く扱われた」
感情:怒り、悔しさ、恥ずかしさ、不安
身体反応:胸が熱くなる、肩に力が入る
行動:言い返したくなる、黙り込む、その場を離れたくなる

というように分けてみます。

怒りをすぐに消そうとしなくても大丈夫です。

まずは、「今、自分の中で何が起きているのか」を知ることが、扱いやすくするための第一歩になります。

まず身体を落ち着かせ、少し間をつくる

怒りが強いときは、頭で考えようとしても、うまく整理できないことがあります。

そのようなときは、まず身体の興奮を少し落ち着かせることが役に立ちます。

たとえば、次のような呼吸を数回くり返してみます。

  • 3秒かけて息を吸う
  • 6秒かけて息を吐く
  • 吐く息を少し長めにする
  • 呼吸で動く空気や、身体の感覚に注意を向ける

怒りが一瞬で消えるわけではありません。

それでも、呼吸をゆっくりにすることで、怒りの勢いのままに行動する前に、少しだけ間をつくりやすくなります。

その少しの間があることで、

今すぐ言い返すのか。
少し時間を置くのか。
その場を離れるのか。
あとで落ち着いて伝えるのか。

といった選択肢を持ちやすくなります。

怒りをぶちまけることは、一時しのぎになりやすい

怒りが強いとき、「我慢せずに吐き出した方がいい」と感じることがあります。

たしかに、怒りを言葉や行動に出すことで、一時的にすっきりしたように感じることはあります。

けれども、怒りを攻撃的な形でぶつけることは、問題の解決につながらない場合もあります。

強い言葉をぶつける。
相手を責め続ける。
物に当たる。
相手を脅すような態度をとる。

こうした行動は、その場では怒りを外に出せたように感じるかもしれません。

しかし、相手との関係を傷つけたり、あとで後悔が残ったり、怒ったときに攻撃的に反応するパターンが強まってしまうことがあります。

怒りは、感じてもよい感情です。

ただし、怒りをそのまま攻撃としてぶつけることが、いつも自分を助けてくれるとは限りません。

大切なのは、怒りをなかったことにすることではなく、怒りが知らせていることを受けとめたうえで、どのような行動を選ぶかを考えることです。

「べき」が強いと、怒りも強くなりやすい

怒りの背景には、「こうあるべき」「こうするべき」という考えが隠れていることがあります。

「普通はこうするべき」
「相手は分かってくれるべき」
「ちゃんと謝るべき」
「自分ばかり我慢するべきではない」

こうした考えは、自分にとって大切な価値観を教えてくれることもあります。

ただ、「べき」が強くなりすぎると、相手や自分への評価が厳しくなり、怒りが大きくなりやすいことがあります。

そのようなときは、「べき」を少しやわらかい言葉に置き換えてみることが役に立つ場合があります。

「相手は分かってくれるべき」

ではなく、

「本当は、分かってもらえたらうれしかった」

「ちゃんと謝るべき」

ではなく、

「自分を大切に扱ってほしかった」

「自分ばかり我慢するべきではない」

ではなく、

「自分の気持ちも同じように大切にしたい」

このように言い換えると、怒りの奥にある願いや希望が見えやすくなります。

怒りをただぶつけるのではなく、自分が本当は何を大切にしたかったのかに気づきやすくなります。

怒りをぶつけることと、怒りを伝えることは少し違います

怒りがあるとき、相手に何かを伝える必要がある場合もあります。

ただし、怒りをそのままぶつけることと、自分の気持ちや希望を伝えることは少し違います。

怒りをぶつけると、

「あなたが悪い」
「どうして分からないの」
「普通はこうするべきでしょう」

という形になりやすくなります。

この言い方は、一時的にはすっきりするかもしれません。

でも、相手が防衛的になったり、関係がさらにこじれたりすることもあります。

一方で、怒りの奥にある大切なことを伝えると、

「私はこう感じた」
「ここは大切にしてほしい」
「次からはこうしてもらえると助かる」

という形に近づきます。

「あなたが悪い」と相手を評価したり責めたりするのではなく、「私はこう感じた」という自分の事実を伝える。

これを、Iメッセージと呼ぶことがあります。

怒りを消す必要はありません。

ただ、怒りのエネルギーを、相手を攻撃するためではなく、自分の大切なことを相手に伝えるために使えると、少し扱いやすくなることがあります。

怒りを抑え込みすぎると、自分を傷つけてしまうこともあります

怒りを表に出しすぎると、人との関係が苦しくなることがあります。

一方で、怒りをまったく出さずに抑え込み続けることも、こころに大きな負担をかけます。

「自分が我慢すればいい」
「これくらいで怒ってはいけない」
「相手を困らせたくない」
「波風を立てたくない」

そうやって怒りを抑え込み続けると、自分の限界や本音が分からなくなることがあります。

また、外に向けられなかった怒りの強いエネルギーが、自分への攻撃として内側に向かうこともあります。

「自分が悪い」
「自分が弱い」
「自分がちゃんとしていればよかった」

というように、自分を責める形に変わってしまうこともあります。

怒りをそのままぶつける必要はありません。

でも、怒りがあることに気づき、自分の中でその意味を受けとめることは大切です。

怒りが強いときにできる小さな工夫

怒りが強いときは、すぐに正しく整理しようとしなくても大丈夫です。

まずは、怒りに飲み込まれすぎないために、少し時間と距離をとることが役に立つことがあります。

  • すぐに返信しない
  • その場を少し離れる
  • 5つ数えてから話す
  • 3秒吸って、6秒吐く呼吸を数回行う
  • 怒りを感じた出来事を紙に書き出す
  • 「何が嫌だったのか」を言葉にしてみる
  • 「本当はどうしてほしかったのか」を考えてみる
  • 今すぐ伝える必要があるのか、少し時間を置けるのかを確認する

怒りを無理に消そうとしなくても大丈夫です。

まずは、怒りの勢いのままに動くのではなく、少しだけ立ち止まること。

それだけでも、選べる行動が増えることがあります。

ひとりで整理するのが難しいときは

怒りが強いときは、自分でも何に怒っているのか分からなくなることがあります。

相手に伝えた方がいいのか。
距離を置いた方がいいのか。
自分が我慢しすぎているのか。
それとも、怒りが強くなりすぎているのか。

ひとりでは判断しにくくなることもあります。

カウンセリングでは、怒りを無理に消そうとするのではなく、その怒りがどのような場面で強くなるのか、何を守ろうとしているのかを一緒に整理していきます。

怒りを責めるのではなく、少しずつ理解し、扱いやすくしていく時間です。

ひとりで整理するのが難しいときは、どうぞ抱え込まず、カウンセリングを頼ってください。